2013年8月15日木曜日

味わう

 
 
 

 
 
 
 
挽臼(ひきうす)
 
 
扉を開ける
「こんにちは」
『はい、いらっしゃい』
そんな当たり前の挨拶から始まった
 
『お食事?それともお茶にする?』
 
茶器がたくさん並ぶ店内では
観光客のカップルと
常連さんらしき
年配の女性
 
 
テーブル席はひとつ
 
お客のほとんどは
L字型のカウンターに座る
 
店主との会話を
他のお客も聞くことで
心地よい
一体感が
生まれてゆく
 
京都に来たのだから
抹茶のスイーツを…
 
 
うん、
美味い
「これは凄い」
思わず呟いた
 
香りが立ち
舌の奥で微かに感じる
抹茶の粒状感
 
臼で挽くとこんなにも違うのか
高速粉砕機やセラミックボールの
粉砕機では粒子が均一に
ならないらしい 
 
切る・つぶす・する
 
といった作用が
理想的な粒子をつくり
石臼による適度な摩擦が
このような美味しさを
引き出してくれるとの事
 
こういった手間をかける
お店は京都でも
少なくなったらしい
 
穏やかに語る店主
美しい所作
長年の匠の技を
ぼんやり眺めていた
 
気がつけば
店内はお客で一杯だ
 
『またおいで』
店主にかけられた
言葉が妙にうれしかった
 
まとわりつくような
蒸し暑い京都の夏
抹茶の爽やかな香りは
ひと時の清涼感さえ
与えてくれる
 
 
 
 
 
 
 
 


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